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「家族信託」は、平成18年に「信託法」という法律が大改正され翌19年に施行されて
から初めて本格的に使えるようになった制度で、とても歴史が新しいのです。
これまでは、財産を「遺す(承継帰属させる)」という仕組みである「遺産の承継」は、
一般的には遺言や相続あるいは贈与などの制度によって、また家族の中で判断能力等が
不十分な人の財産を「守る(管理する)」「活かす(活用する)」という仕組みである
「後見的な財産管理」は、多くの成年後見制度や任意の財産管理等委任契約によって
達成されてきました。
それらの制度の使い勝手の悪さを解消すべく、「家族信託」が新たに登場したことにな
ります。

   これらの制度を補完しさらに一部代替する機能を有する「家族信託」は、まさに家族の安定した生活と福祉を確保する財産の管理活用の制度であり、
  また大事な財産をしっかりと大切な人や後継者に引き渡すための財産承継の制度であって、これら二つの制度を一つの仕組みで達成するものです。
  我が国に成年後見制度が導入されたのは平成12年ですが、その頃は成年後見制度のテーマとして「自己決定権の尊重」とか「残存能力の活用」とか
  「ノーマライゼーション」といった言葉が示され、認知症になった人も、その症状に応じ「補助」「保佐」「後見」という3つの制度を組み合わせて
  柔軟に対応しようということになっていました。
   しかし、この制度の運用においては、後見人の行動はすべて家庭裁判所の監督下にあり、少しでも難しい判断は家庭裁判所に委ねることになりましたから、
  新たな借金や投資、不動産購入などは基本的にすべてNG、死亡するまで財産をそのまま凍結しておくしかありません。
  少なくとも不動産などの重要な財産については「使えない」というしかありません。
  これとは別に、家族信託という新薬は、それとは根本的に異なる「家族信託契約」という新たな仕組みで効能・効果を発揮させようとするものです。
   もっとも、後見人の仕事は財産管理ばかりではなく、例えば施設への入所契約を締結するとか、悪徳商法に騙されたときに被害を取り戻すなど、
  もっと重要な仕事があるのですから、後見人自体をつける必要はあります。

   我が国には法定相続制度があり、単に「その人の子」というだけで自動的に財産を相続できると考えている人が多いようですが、
  それは大きな勘違いで、我が国の民法は「遺言があれば遺言のとおり」「遺言がなければ法定相続」という構成になっており、
  あくまで原則は遺言、例外が法定相続なのです。
   しかし、民法にはさらにその例外の例外があり、「遺言があっても兄弟姉妹を除く法定相続人には、相続分の一部を取り返す権利(遺留分)がある」
  とされていますので、これが相続を混乱させる大きな原因のひとつとなっています。
  相続人の中に「親孝行者」と「親不孝者」がいた場合、社会規範的には当然に親孝行者が報われるべきところ、民法ではむしろ「親不孝者」のほうに
  強力な権利を与えてしまってあるのです。
   このような状況を回避するには、民法以外の他の制度を使うしか現段階では方法がないと思います。この切り札となるのが「家族信託」なのです。
  財産管理・承継対策の実現には、「家族信託」がかなり有効であり、遅くとも財産の所有者が認知症になってしまう前の段階から予防対策を講じておく
  必要があります。

「家族信託とは何か?」

これを一言でいうと「権利と名義の分離」ということです。
一般的な家族信託では、所有者は、家族信託の締結によって「委託者」という人に変身し、「名義」を「受託者」という名の他人に書き換えるのです。
そして、もし信託契約を元の所有者の死亡後も継続したいという意向であれば、最初の契約の段階から「二次受益者」を決めておきます。
そして、本当の権利については、元の所有者が「受益者」という名の人に変身してそのまま持ち続け、その人が死亡したら、契約に基づいて、
直ちに二次受益者に権利が移動する、という構成となっています。
家族信託がスタートした瞬間から、「所有者」という名の人はいなくなってしまいます。
すなわち、家族信託によって所有権は一時的にその姿を隠し、その権利については「受益権」という名に変わって「受益者」が持ち、
その名義については「受託者」が持つことになるのです。

家族信託の登場人物

委託者:
財産の所有者である委託者は、受託者になる予定の者と、自分の財産の中から、信託したいと考える財産
(一般的には日常生活で使っているような現金預金や動産などは信託せず自由な状態に置いておき、
特に選び出した大切な財産)を対象とする家族信託を締結することになります。そして、信託によって実現
しようとする目的(信託目的)のために、自分の財産(信託財産)を受託者に預けることになります。
契約の対象にした財産を「別の財布」に入れた瞬間、家族信託の効力が発生して、財産は「権利」と「名義」
に分かれます。
そして、その名義を受託者に変更し、権利はそのまま持ち続けるのですが、それ以後は「委託者」ではなく
「受益者」という名で登場することとなり、その後は委託者という名前は出てくることはほぼなくなって、
例えば契約の変更や解除などは、受益者と受託者とで行うことになります。
受託者:
受託者の役割は、委託者から名義を託された財産を、家族信託契約の目的に従って管理や運用、あるいは処分
をする権限と義務を持つこと、それに伴い信託財産から生じた利益を受益者に支払うこと、そのために受託者
の固有財産と委託者からの信託財産を完全に分別する義務を負うことが、主な役割となります。
受託者は、信託に関して何等の財産的権利もないのに義務と責任ばかりを課せられるという、いわば極めて損
な役回りとなるので、だからこそ「家族」でないと務まらない役柄でもあるのです。
受益者 :
受益者とは、受託者から信託財産からの給付を受ける権利などを持っている者です。信託は、この受益者に
利益を与えることを目的として設定されるもので、受益者は、自らの利益を守るため、受託者を監視・監督
する役割を担っています。受託者による権限の濫用または逸脱を監視・監督する第一次的な地位にあるのが
受益者なのです。

家族信託のメリットについて

家族信託とは、遺産を持つ方が自分の老後や介護などに必要な資金の管理・給付を行う際、お持ちの不動産や預貯金などを信頼できる家族に託して
管理・処分を任せる、「家族」のための財産管理のことです。 その使い勝手の良さやメリットの多さから、現在とても注目されてきています。
しかし、まだまだ一般的には浸透していないことから、家族信託のメリットや使い方をご存じではない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、家族信託を使うことのメリットについてご説明させて頂きますので、是非、ご覧いただき、家族信託を身近なものとして考えていただきたいと思います。

メリット~1 本人の判断能力などに左右されない財産の管理処分ができる!
本人の元気なうちから財産管理を託せるとともに、託した後に本人の判断能力が低下しても、“本人の意思確認手続”が本人に対して行われないので、実質的に財産は“凍結”されることなく、財産管理を託した子などの家族(「受託者」と言います。)主導で、財産の管理や処分がスムーズに行われることになります。
具体的には、家族信託を事前に組んでおくことで、老親が入院・入所したために空き家となった老親の自宅を適切な時期に適切な価格で受託者が売却できるなどの
メリットがあります。
メリット~2 成年後見制度に代わる柔軟な財産管理が実行できる!
成年後見制度は、案外負担と制約が多く、毎年家庭裁判所への報告義務があったり、財産の積極的な活用や生前贈与などの相続税対策がしにくいといった負担が
あります。
一方、家族信託による財産管理は、本人が元気のうちに、本人の希望・方針及びそのために付与する権限をきちんと信託契約書の中に残しておけるので、
その希望・方針に反しない限り、財産の担い手である受託者は、本人の希望に即した柔軟な財産管理・積極的な資産の有効活用ができます。
つまり、成年後見制度の下では実行できない“資産の組換え(遊休不動産の開発、老朽化した賃貸物件の建替え、不動産の買換え、借入れによるアパートの建設
など)による「相続対策」の実行も、本人の健康状態に左右されずに相続発生(本人の死亡)のギリギリまで継続できるというメリットがあります。
メリット~3 遺言の機能も含まれている!
家族信託には遺言の機能も含まれており、委託者と受託者との契約で行うので、自分の死後に発生した相続にあたって受益者を誰にするかをあらかじめ指定する
ことができます。本来の遺言はこの家族信託とは違い、自分の死後に発生した相続について何らかの権利義務を設定することはできません。
また、遺言を残そうと思った場合は、本来であれば法定の形式に厳格に従って作成する必要があるのですが、家族信託にはそんな面倒な決まりはありません。
こういった厳格な決まりがないことから、家族信託を遺言として利用することはとても便利であるといえます。
メリット~4 不動産の共有回避や共有不動産の塩漬け予防が実現できる!
不動産を将来的に兄弟・親戚などで共有せざるを得ない場合、あるいは、既に兄弟等で不動産が共有状態になってしまっている場合に、何らかの事情により共有者
全員の同意が得られなくなり、ベストなタイミングで不動産が有効活用・処分ができなくなるリスクが回避できます。共有者としての権利・財産的価値は、平等を
実現しつつ、管理処分権限を共有者の一人に集約させることで、不動産の“塩漬け”を防ぐことができるのが、家族信託のメリットです。
メリット~5 二次相続が指定できる!
家族信託は、二次相続を想定した相続対策としても非常に有効な選択肢となります。指定に関して言えば遺言書でもできますが、遺言書で指定できるのは、
遺言者である被相続人が亡くなった時の一次相続の方法についてのみになっています。
たとえば、一次相続の被相続人Aは財産をBには相続させたいが、Bの相続人であるCには相続させたくない場合、遺言書でAの希望を残すことが困難になります。
しかし、家族信託を利用すれば、AはBを財産の受託者とし、Bが死亡した後はCではなくDを受益者とする仕組みを作ることが可能です。
このように、遺言書よりも自由度が高く、個々の被相続人や相続人の意向に応じた相続の仕組みを作れるのが家族信託のメリットといえます。

家族信託のデメリット

以上のように、メリットの多い家族信託ではありますが、デメリットが無いわけではありません。次に家族信託のデメリットについてご紹介します。
1 成年後見でないとできないこともある
家族信託は財産の管理や処分に必要な行為を行うものであるのに対して、成年後見制度は民法で身上配慮義務を規定して本人の財産管理や身上監護も念頭において
いる点が大きな違いです。
家族信託に身上監護に関する内容を含めることも可能ですが、本人の法定代理人である成年後見人でなければ適切な身上監護ができない部分もあります。
2 受託者を誰にするかで揉める可能性がある
家族信託は、財産を適切に管理・処分できて、かつ信頼できる家族などがいるかどうかが大きなポイントとなりますまた、受託者に財産の名義が変わるということ
は、委託者が判断能力があるうちから利用できるというメリットではあるのですが、自分の財産が自分名義でなくなることに抵抗感を持つ人もいるでしょうし、
信頼して任せたのに管理がずさんにされると、相続人の中から不満の声が上がりトラブルになる可能性もあります。

「信託は贈与?」

信託とは、最初に財産を持っている委託者が、その財産を受益者に対して、ある条件を付けたうえで贈与することをいうのです。
その条件とは、
①所有権ではなく受益者が贈与されること、それに伴い信託期間中の名義は受託者が持ち続けること
②契約者の中に二次受益者(受益者が死亡した後に受益者権を取得すると定められている者)や三次受益者(二次受益者の次に受益権を
 取得すると定められている者)の規定があればその最終の受益権に至るまで贈与を繰り返されること
③信託契約で行われる贈与について、民法の規定ではなく信託法の規定によって行われること、
 すなわち民法上での「贈与」や「相続」とはまったく異なる法律構成であるということです。

最後に…

以上のご説明でお分かりだろうと存じますが、「家族信託契約」の内容は委託者およびその家族の事情により千差万別であり、
どれ一つとっても同じものはありません。
「家族信託とは、長く続く芝居の脚本のようなものである」という人がいますが、この芝居は架空の物語でなく、実際に生きている人間が
現実の暮らしの中で演じていくという、まさにノンフィクションのドラマですから、決して安易に考えることはできません。
ハッピーエンドでの終演に至るまでの緻密なストーリーを作らなければなりませんが、この作業と契約スタート後のフォローや
変更調整については、是非、当事務所をご利用ください。

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